『決断力』52万部、『大局観』18万部、『直観力』10万部。
これはある著者の本のタイトルと売れた数を並べたもの。1万部売るのも難しい今の時代に、10万部超えのベストセラーを連発。その著者の正体は、将棋の棋士、羽生善治さんです。
ざっと印税を計算したところ、6400万円。家が2個買えます。
なぜ羽生さんの本はベストセラーになるのか? 有名人だから? いえいえ、タレント本はそれほど売れませんし、有名人という理由だけで3冊もベストセラーは出せません。羽生さんの本は、面白いから売れるのです。つまり羽生さんは、作家の才能もあるということ。
羽生さんの本が面白い理由は、文章が上手くて構成がしっかりしているから。
羽生さんは相当な読書家。「実録!ブンヤ日誌」のインタビュー(http://www.mishimaga.com/bunyanikki/039.html)によると、月に30冊も買っているとか。本を100冊読めば1冊書けるなんて言いますから、たくさんの本を読んでいる羽生さんは、文章が上手いのです。
構成がしっかりしているのは、将棋が強いから。将棋は序盤、中盤、終盤に分かれていて、勝ちに向かっていくストーリーを考えます。本も同じですよね。つかみがあって、エピソードが出てきて、うまくまとめて終わり。
たとえば『決断力』では、本文に入る前の「つかみ」で、名人戦で米長名人を倒すまでの心の葛藤がリアルに描かれており、いきなり引き付けられます。そこから本文に入り、勝つためのエッセンスが豊富なエピソードとともに語られており、思わず読み進めてしまいます。
読書で得た「文章力」と将棋で鍛えた「構成力」があるから、羽生さんの本は面白いのです。
本を出すたびベストセラーですから、出版社から「本を書いてほしい」というお願いは殺到しているはず。ですが羽生さんの本業は、あくまでも将棋。羽生さんがすべての時間を本を書くことに使えたら、本の売り上げは1億冊を突破して、日本一売上の多い作家になってしまうでしょう。
本業は作家じゃないのにベストセラーを連発。だから羽生さんはスゴいのです。