昭和30年代に書かれた『考えるヒント』で現在のコンピューター将棋と人間の関係が予言されていた

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考えるヒント

 たまたま本屋で手に取った『考えるヒント』という本。読み始めてその内容に驚いた。昭和30年代、僕が生まれる前にずっと書かれた本なのに、現在の将棋界、とくにコンピューター将棋と人間の関係について、ズバリ予言しているのだ。

 以下アマゾンの試し読みでも読めるのでぜひご一読頂きたい。ざっと内容を紹介すると、著者が将棋を指す「電子頭脳」を見に行き、その流れで著者と宇吉郎先生が将棋の神様同士が将棋を指したらどうなるか? という話になる。その会話を引用する。

小林秀雄著『考えるヒント』より

「将棋の神様同士で指してみたら、と言うんだよ」
「馬鹿言いなさんな」
「馬鹿なのは俺で、神様じゃない。神様なら読み切れる筈だ」
「そりゃ、駒のコンビネーションの数は一定だから、そういう筈だが、いくら神様だって、計算しようとなれば、何億年かかるかわからない」
「何億年かかろうが、一向構わぬ」
「そんなら、結果は出るさ。無意味な結果が出る筈だ」
「無意味な結果とは、勝負を無意味にする結果という意味だな」
「無論そうだ」
「ともかく、先手必勝であるか、後手必勝であるか、それとも千日手になるか、三つのうち、どれかになる事は判明する筈だな」
「そういう筈だ」
「仮りに、先手必勝の結果が出たら、神様はどうぞお先へ、という事になるな」
「当たり前じゃないか。先手を決める振り駒だけが勝負になる」
(引用終わり)

 いかがだろうか? 現在の人間とコンピューター将棋の関係を予言していると思わないだろうか? とても昭和30年代に書かれた文章とは思えない。将棋が振り駒だけの勝負になる日も近づいているのかもしれない。

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