「将棋の神様に感謝したい」
負ければ地球が侵略されるという、将棋星人との「将棋対決」に見事勝利し、人類を救った棋士の羽生善治さん。その功績がたたえられ、「ノーベル平和賞」を受賞しました。一夜明け、報道陣のインタビューに答えました。
―「ノーベル平和賞」、おめでとうございます。今のお気持ちは?
ありがとうございます。まさか将棋に勝って「ノーベル賞」を頂くことになるとは思いませんでした。ホッとしています。
―宇宙人が地球に攻めてきたとき、どう思いましたか?
テレビのニュースを釘づけになって見ていました。宇宙人は映画の中だけの話だと思っていましたので。大変なことになったと驚きました。
―宇宙人は将棋星人と名乗り、「将棋で勝ったら地球を侵略する」と脅してきました。どのように羽生さんにお話しがきたのでしょうか?
はい。まず将棋星人とアメリカ大統領のオバマさんが、ホワイトハウスで交渉したそうです。話し合いで解決を目指したのですがうまくいかず、アメリカ政府から日本政府に話がきたようです。
―政府からどのような話がありましたか?
総理から直接、将棋星人と将棋の対局をして頂きたいと。
―どう思われましたか?
勘弁してくださいと。人の命がかかっていますから。丁重にお断りしました。
―総理はなんと?
即答しなくてよいので考えてほしいと。将棋星人に勝てるのは羽生さん以外いませんと。
―それがなぜ引き受けたのですか?
その後、家族に話しをしました。てっきり反対すると思っていたのですが「すごいね、人類代表なんて。勝ったらヒーローだね」と後押しされまして。それを聞いて逃げずに戦おうと決心しました。
―対局まで、相当なプレッシャーがあったのでは?
そうですね。人類の命がかかっているわけですから。ただ私は「玲瓏」という言葉をよく使うのですが、雑念を取り払って澄んだ心で対局できるように、いつもと同じように過ごすことを心がけました。
―将棋星人との対局が決まってから、対策は立てましたか?
立てようがないんですよ。将棋星人の将棋なんてみたことがないですし。
―対局は非公開でしたが、どこで対局されたのですか?
エリザベス宮殿です。将棋星人が指定してきたようです。なぜエリザベス宮殿なのかは今だに分かりません(笑)。
―将棋星人の印象はいかがでしたか?
緑色でぬるぬるしているなあと。顔は「はにわ」のようでした。目と口が黒くて驚きましたね。映画に出てくる宇宙人とはだいぶ違いました(笑)。
―では将棋の話に移ります。将棋星人に見事勝たれましたが、どのような将棋でしたか?
不思議な将棋でした。序盤から人間ではありえない指し方をしてきて。力戦型になったんですが、そこからジリジリした勝負になって。途中で悪くなったんですが、最後はなんとか勝ったという印象です。
―棋譜が公開されましたが、将棋星人の守りの形が独特ですね。ネットでは「UFO囲い」と言われています。
ええ。王様のまわりに金銀がいて、ふわっと浮いた形で。やられてみると意外と固くて困りました。
―60手目の角をタダで捨てた手が、勝利を呼び込んだ「羽生マジック」でしょうか?
あの局面は歩で角を取らせたんですけど、そうすることでスペースが出来て、20手後くらい、最後の詰む詰まないになった時に生きるだろうと。結果うまくいきました。
―勝ったのは82手でした。まさにハブ(82)ですね。
あはは。狙ったわけじゃないですよ。そんな余裕ないですから。
―勝ったときはどう思いましたか?
あまり覚えていないのですが、とにかくホッとしました。
―将棋星人は負けたとき、どんな感じでしたか?
将棋星人はボイスチェンジャーのような機械で、日本語もしゃべっていました。悔しそうでしたね。「また来る」と言ってきたので「他の星にしてください」とお願いしておきました。
―同じく日本人で「ノーベル賞」を受賞した大村さんは「微生物に感謝したい」とのことですが、羽生さんは何に感謝したいですか?
その質問、くると思っていました(笑)。将棋のおかげです。将棋の神様に感謝したいです。